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自然災害やサイバー攻撃など、企業経営を脅かすリスクは多々あります。これらのリスクに対応し、いかなるときにも自社にとって重要な事業を継続させるには、戦略的に対策を考え、実行するBCP(事業継続計画)の策定が欠かせません。
ここでは、企業に必要不可欠なBCPについて具体的な対策や策定手順をわかりやすく解説していきます。実際にBCPを策定し、対策を行っている他社の事例もまとめました。
企業に必要なBCP対策とは
BCPとは「Business Continuity Plan」の頭文字をとった言葉で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。具体的には、自然災害やサイバー攻撃、システム障害など企業を脅かすインシデントが発生した際に、被害を最小限に抑え、自社の中核事業を停止させない、または早期復旧を図るための計画のことです。
2025年1月に発生した能登半島地震では、機械・設備が被災し、事業の復旧目処が立たず、倒産してしまった企業の事例も報告されています。最悪の事態に陥らないためにも、BCPを策定し、事前の対策を行うことがどの企業においても欠かせません。
BCP対策が必要な5つの項目
BCPを策定する際に対策が必要な5つの項目について詳しく解説します。
1)ヒト(従業員)
どれほどIT化が進もうと、優れた機械を導入しようと、企業経営の根幹を成すのは人材です。緊急時の事業継続においても、まず「ヒト(従業員)」を大事にすることが求められます。
従業員の安全確保が第一ですが、事業継続における人的リソースの確保という視点も重要です。緊急事態が発生した際に従業員の安否確認とともに、復旧作業に対応できる従業員を把握することで、迅速に復旧作業に移ることができます。
2)組織体制
自然災害などの緊急事態が起きた際、現場では混乱が起きやすくなります。二次災害や事業復旧の遅れなどを招かないよう、現場の指揮をとる組織体制をあらかじめ整えておくことが重要です。
全体をまとめる責任者をはじめ、避難誘導担当や情報連絡担当などの役割分担を事前に決めておきましょう。責任者が被災した場合に備えて、代理者を設定しておくことも重要なポイントです。
3)モノ(建物や設備)
自社の製品や備品、設備などの「モノ」も大切な経営資源です。また、いくら人的リソースが確保できていても、建物や機械などが損壊してしまえば、事業の継続は厳しくなります。
建物の耐震性を高めたり、災害対策として止水板を設置したりするなどの事前対策を講じておきましょう。オフィスの棚の転倒防止策なども、二次被害を防ぐために必要です。
4)カネ(資金)
事業が停止して売上が落ち込んだり、ゼロになったりした場合でも、従業員への給料や固定費の支払いは発生し続けます。緊急事態に見舞われたときに、その状況に耐えうるだけの資金があるかを事前に確認しておかなければなりません。
また、設備が損壊するなど万が一の事態を想定して、すぐに利用できる経営資金をあらかじめ確保しておくことも重要です。
5)情報
事業にとって重要なデータが失われてしまった場合、事業の停止につながってしまう可能性が高くなります。データのバックアップをとっておく、データを本社とは別の複数箇所に分散させるなどの対策が必要です。
ここで紹介した5つの項目のうち、ITに関しては専門知識が必要な分、対策が不十分になりがちです。顧客情報や製造ノウハウなどの情報は企業の重要な資産であると理解し、必ず対策を行いましょう。
BCP対策の立て方・手順
BCP対策の立て方・手順を以下の流れで解説します。
- 基本方針の策定
- 対象とするインシデントの選定
- 現状把握と計画立案
- 計画の実施
1. 基本方針の策定
まず、BCPの根幹となる基本方針を定めます。たとえば「中核事業の存続させるため」や「従業員の安全と雇用を守るため」など、“何のためにBCPを策定するか”という視点で考え、目的を定めます。
基本方針はBCPの考え方や方向性を示すものであり、経営理念やビジョン、経営戦略などとも連動します。そのため経営者自身が基本方針を定めることが重要です。
2. 対象とするインシデントの選定
自社を脅かすリスクを洗い出し、特に対策を行うべきインシデントを選定しましょう。ハザードマップなどもインシデントを選定する際の判断材料になります。
BCPは地震や台風などの自然災害から、サイバー攻撃、システム障害までさまざまなリスクを想定した計画ですが、はじめからすべてのインシデントへの対策を考えるのは現実的ではありません。まずはリスクの高いインシデントから対策を考え、徐々に対象範囲を増やしていきましょう。
3. 現状把握と計画立案
先ほど選定したインシデントが発生した場合、自社にどのような影響が与えられるかイメージし、弱みとなる部分に必要な対策を考えましょう。
緊急事態下では人員や設備が不足する可能性があります。そのなかで迅速に対応していくには、優先的に復旧させたい中核事業をあらかじめ選定しておくことが重要です。また、被害を最小限に抑えるため、目標復旧時間(RTO)も設定しましょう。目標復旧時間(RTO)の設定は、以下の記事をぜひ参考にしてください。
会社の存続に関わる重要な事業を選定したら、リスク発生時のボトルネックを把握します。事業遂行のために欠かせない資源や必要不可欠な設備など、事業を停止させたり、復旧を長引かせたりする可能性のあるボトルネックは、事前の対策が必要です。代替資源を確保できるよう準備しておく、機械が倒れないよう床に固定するなど対策を考えてください。
4. 計画の実施
上記で計画した対策を実行していきましょう。あわせて、避難経路や安否確認体制の確立なども必要です。
また、BCPは策定しただけでは不十分です。BCPはあくまで事業継続の方針やプロセスをまとめた資料のため、実行力を高めるには具体的な行動指針を記載したマニュアルが必要です。復旧手順書や事前対策マニュアル、緊急時対策マニュアルなどを作成し、従業員に周知させましょう。
BCP策定時のポイント・注意点

BCPは策定するだけでなく、教育や訓練、定期的な見直し・改善を含めたBCM(事業継続マネジメント)を構築することが重要です。せっかくBCPを策定しても、「内容が古くなっていて有事の際に機能しなかった」という事例もあります。継続的なブラッシュアップが、BCPの実効性を高めるために必要です。BCMの構築については、以下の記事でもまとめているので、ぜひチェックしてみてください。
また、BCPの策定には思いのほかコストがかかります。人件費や設備などの体制整備にかかるコスト、外部コンサルタントに依頼する場合は委託費用も生じるでしょう。そのため、費用対効果を考えながら計画を立てることがポイントです。まずはオフィスの地震対策など、低コストで始められる部分から着手していくとよいでしょう。
BCP対策の具体例
最後に、BCPを策定し、実際に対策を行っている他社の事例を紹介します。
製造業の事例
山梨県に本社を置く製造メーカーの事例を紹介します。こちらの企業は大規模地震が発生した際、本社の事業が停止する可能性があると考え、別の場所にある工場を代替拠点にできるよう体制を整えました。
生産に必要な図面データはすべてバックアップをとったほか、被災時に限られた人員で稼働できるよう生産ラインで使われる機械をどの社員でも使えるよう日頃から訓練しています。
BCPを見直した際、別工場への部品運搬で使う道路が災害で不通になるリスクが浮上したため、現在、新たな対策を練っているそうです。
飲食業の事例
毎年のように大雨の被害にあっていたという福岡県の飲食店では、水害時に使えるよう土のうを備蓄したり、大雨が予想される日は仕入れ量を少なく調整したりなど、低コストでできる対策から始めました。
また、客席より厨房が低い位置にあり、浸水リスクが高いという構造上の問題もありました。厨房の設備をブロックを使って高い位置に設置することで、浸水の被害を最小限に抑えるよう工夫しています。
卸売業の事例
神奈川県の繊維商社は、大規模地震と津波を想定し、BCPの策定を行いました。従業員の安否確認体制や重要なデータのバックアップなど、経営資源の見直しを図りながら全体的に対策を講じています。
緊急事態が発生した際に、3日以内に受注・発注業務を対応できるよう体制も整えました。パソコンが使用できない場合の電話対応や、仕入れ先から販売先へ直接納品できる物流体制などを確立し、緊急事態に備えています。
BCP対策は継続的な取り組みが鍵
BCP対策は一朝一夕ではできないため、継続的な見直しと改善、従業員への教育が重要です。記事で紹介した事例でも一度策定したBCPを改善し、実効性の高い計画へと進化させています。まずはできる部分から対策を練って、実行に移していきましょう。
また、技術革新が進み、AIやシステムなどのテクノロジーがBCP対策に変革をもたらしています。インフォコムでは初動対応をサポートする「BCPortal」や、AIを活用した危機管理システム「Spectee Pro」などのサービスを提供しています。BCP対策を強化したいBCP担当者の方はぜひ注目してください。













