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防災訓練マニュアルの作り方・必要項目

記事イメージ画像:防災訓練マニュアルの作り方・必要項目

一定の条件を満たす建築物や工作物に限り、消防法で自衛消防訓練の実施が定められています。しかし消防法によらずとも企業や団体、自治体においては災害時の人的・物的被害を軽減し、人々の安全確保や事業・業務の継続のために防災訓練の実施が求められています。

ここでは毎年実施している防災訓練をマニュアルとして整理したい担当者に向け、防災訓練マニュアルの作り方や作成ポイント、必要項目などを解説します。あわせて防災訓練の実施手順やシナリオ例も紹介します。

企業・団体・自治体が行うべき防災訓練

一定条件を満たした特定の建築物や工作物では、管理権原者に対して防火防災管理業務の実施が義務付けられています(条例によっては努力義務の場合もあり)。対象となる建築物や工作物においては、防火・消火訓練や避難訓練などを総合的に行う自衛消防訓練を実施しなければなりません。この自衛消防訓練のうち、火災に限らず地震や津波なども対象とした防災訓練は、避難訓練のみです。

消防法では上記のように定められていますが、該当しない施設などにおいても災害への備えとして防災訓練は欠かせません。自衛消防訓練が義務付けられていない場合でも必ず防災訓練を計画し、定期的に実施しましょう。

また、義務付けられている訓練以外にも、事業所の実態にあわせて応急救護訓練や安否確認訓練など必要な訓練を行ってください。

防災訓練マニュアルの必要項目

防災訓練マニュアルとは、防災訓練を円滑に実施するために訓練の設計から準備、当日の運営、訓練後の振り返りと改善までを体系化した実務的な手順書です。これらをあらかじめまとめておくことで、担当者が変わっても実践的な訓練を実施し続けることができます。

防災訓練には、以下の項目が必要です。それぞれ詳しく解説していきます。

  • 防災訓練の目的
  • 役割分担
  • 訓練シナリオ
  • 行動手順

防災訓練の目的

まずは防災訓練の目的を設定します。訓練の狙いが不明瞭であると、形だけの訓練となってしまい、実践的な対応力が身につかない可能性があります。たとえば以下のように目的を明確にしましょう。

  • 地震発生直後の行動を全員が理解する
  • 二次災害を防ぎながら全員が無事に避難する
  • 従業員で助け合って迅速に初期消火を行う

この目的に沿って参加者やシナリオを作成するため、最初に設定することが肝心です。

役割分担

防災訓練マニュアルには、災害時の役割分担が必要です。以下で役割分担の一例を紹介します。

全体責任者災害時の全体の指揮をとる責任者
安否確認班従業員とその家族、市民などの安否状況を確認、収集する係
情報収集班災害情報の収集や伝達を行ったり、事業や業務の継続に必要な情報を集めたりなどする係
通報連絡班消防署への通報や避難の指示などを行う係
救出・救護班被災者の救出やけがの手当、救急車の要請などを行う係
消化消火班周囲の安全確認や初期消火などを行う係
避難誘導班二次災害予防のための対応を行いながら避難経路の確認や避難誘導を行う係

防災訓練マニュアルにはそれぞれの班の担当者を必ず明記しましょう。担当者が被災した場合に備えて、代理の担当者も決めておいてください。

訓練シナリオ

防災訓練の目的に沿って、参加者や想定する災害を設定し、シナリオを作成しましょう。災害の発生日時や場所、規模のほか、避難訓練であれば避難場所などを細かく決めます。

シナリオを作成する際は、事業所の実情にあった状況を設定することがポイントです。たとえば火災が発生したら被害が大きくなりやすい出入り口を出火場所に設定したり、事業所に残る従業員が少なくなるお昼の時間帯を災害発生時刻として想定したりなどしてみてください。

前提条件を決めたら、当日の流れを組み立てます。一般的には事前説明(オリエンテーション)から始まり、訓練実施、振り返りまでがセットです。シナリオにあわせて、資料や消火器具、通報訓練に使う電話など、必要な資機材もマニュアルにまとめておきましょう。

行動手順

シナリオに合わせた行動手順も明確にしておきます。

【火災の場合】
通報連絡班現場の状況を確認して119番へ通報
所在地・状況などを知らせる
館内アナウンスで従業員に避難指示を出す
救出・救護班けが人を確認し、周囲の安全を確保したうえで救護にあたる
(危険がない場合に限り、その場で手当てすることが基本)
必要に応じて救急車を要請
消化・安全確認班大声で火災を知らせ、応援を呼ぶ
消火器を使い、初期消火活動を行う
危険を感じたらすぐに避難する
避難誘導班通報連絡係からのアナウンスを聞いたら、安全な避難経路を確認
メガホンや拡声器を使い、避難誘導を行う
逃げ遅れた人がいないことを確認し、防火扉を締める

上記のようにあらかじめ行動手順を明らかにしておくことで、のちの振り返りにも役立ちます。振り返りでは「誰が悪かったか」ではなく、「マニュアルや前提条件に不足がなかったか」という視点で整理し、次の訓練に活かせるように改善活動を行うことが重要です。参加者全員の意見を収集するためのアンケートも効果的です。

防災訓練マニュアルの作り方・運用のポイント

防災訓練マニュアルを作成・運用する際に押さえておきたいポイントを解説します。

段階的に作成する

防災訓練マニュアルは、訓練の実行、振り返り・検証、見直し・改善のPDCAサイクルをもとに精度を高めていくことが重要なため、最初から完璧な内容を目指す必要はありません。まずは自組織にとって優先順位の高い項目から着手し、アップデートを繰り返しながら防災訓練マニュアルを完成させましょう。

関係者に共有・周知する

円滑かつ実践的な防災訓練を実施するためにも、防災訓練マニュアルの内容を関係者へ共有・周知しましょう。事前に共有することで、訓練の目的や自身の役割を理解したうえで訓練に参加できます。共有する際は紙だけでなく、アプリやメールなど複数の媒体で知らせましょう。

反復し対応を体得する

災害時は誰もがパニックになりやすく、思いがけない行動に出てしまう場合があります。知らない建物に入ったときに不安からつい後戻りしてしまう帰巣性や、自分で判断せず周りの人の行動に合わせてしまう追従性など、災害時ならではの心理が働きます。災害時に落ち着いて行動するには、これらの行動特性を理解するだけでなく、訓練を反復して行い、体に覚えこませることが重要です。

自助・共助の意識をもつ

防災力を高めるには、自助と共助の連携が欠かせません。まず基本となるのは、災害に備えて自分の命を守る自助の意識です。自分を守ることで初めて他者を助けることができるためです。

一人ひとりの防災意識を高め、かつ周囲と助け合う共助の意識を育むには、防災訓練が重要な役割を担います。意識の面からも防災力を高めるために、防災訓練を繰り返し実施していきましょう。

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防災訓練のシナリオ例

ここでは緊急地震速報を活用した避難訓練のシナリオを紹介します。気象庁では緊急地震速報訓練動画を公開しているので、ぜひ活用してみてください。

目的大規模地震が発生した際に、防災マニュアル通りの手順で適切に避難誘導を行う
災害発生日時・場所026年5月15日12:45
長野県でM8.0の地震が発生
避難場所近くの公園
当日の流れ12:30オリエンテーション開始
今回の訓練の目的や流れなどの事前説明を行う
12:45訓練開始
緊急地震速報訓練動画を流す
デスクなどの下に潜り、身を守る
12:48地震による揺れが継続中
引き続きデスクの下で身を守る
12:50安全確認
揺れが収まったので身の回りの安全を確認のうえ、けが人がいないか声を掛け合う
避難誘導班は複数の避難経路を確認するほか、二次災害を防ぐため火元の確認も行う
12:52避難開始
避難経路Aが地震による棚の倒壊でふさがれているため、避難経路Bで避難を開始
エレベーターではなく必ず階段を使用する
13:10確認と報告
人数確認と責任者への報告を行う
13:30訓練終了
事業所へ戻り、反省会を行う

防災訓練においても重要な防災マニュアル

防災訓練の手順や役割分担をまとめたマニュアルとは別に、災害時における従業員の行動指針をわかりやすく記載した防災マニュアルも重要です。防災マニュアルには、発災時の初期対応や役割分担、応急救護の方法などの情報をまとめます。

災害時はパニックになりやすく、冷静な判断ができない場合が多いでしょう。そのため、行動指針となる防災マニュアルは、誰が見ても瞬時に内容を理解できるよう簡潔に、かつわかりやすくまとめる必要があります。作成したら、従業員に配布し、災害時の行動を事前に理解してもらいましょう。

また、防災マニュアルに沿って防災訓練を実施することで、従業員は災害時の適切な行動を習得できるようになります。訓練後の振り返りで課題を見つけた場合は、防災マニュアル自体の見直しを行うことも重要です。

実践的な防災訓練のため防災マニュアルの作成を

効果的な訓練を実施するためには事前の準備が非常に重要です。あらかじめ訓練計画をしっかり立てて、防災訓練を実施しましょう。また、防災訓練マニュアルを作成しておくことで、訓練の属人化を防げ、誰が担当しても実践的な訓練内容に仕上げることができます。防災訓練のマニュアル作成もぜひ行ってみてください。

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著者イメージ
阪神淡路大震災をきっかけに開発した緊急連絡/安否確認システム「エマージェンシーコール」の販売を通じ、お客様の危機管理に関する様々な課題をヒアリング。その豊富な知識とノウハウをコンサルティングやコラムに展開。

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