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地震により発生する災害の種類とは?一次・二次災害について解説

日本は地震が多く発生する国です。過去には地震により甚大な被害を出したケースがいくつもあります。

そのため、地震により発生する様々な種類の災害について把握しておかなければ、実際に災害が発生した際に適切な対策を取ることができません。

そこで今回は、日本で地震災害に備えるべき理由に触れたうえで、地震による一次・二次災害についてみていきましょう。

日本で地震災害に備えるべき理由

日本列島東西の境界線

世界で起きた巨大地震のうち、約10%は日本で発生しています。ここでは、日本で地震が発生しやすい理由についてみていきましょう。

日本は地震が発生しやすい

地球の表面を覆っている厚い岩盤をプレートといい、地球には10を超えるプレートが存在します。陸地や海はそのプレートの上に乗っている状態です。そのうえで、日本列島の周りでは次の4枚のプレートがぶつかり合っています。

 ・北米プレート
 ・ユーラシアプレート
 ・太平洋プレート
 ・フィリピン海プレート

地球上で日本と同様の条件の場所はありません。それぞれのプレートは絶えず動いているため、岩盤中に大きなひずみができ、地震が発生しやすい状況になっています。

加えて、日本にある2,000を超える活断層も地震を起こす要因の一つです。活断層とは、プレート運動や火山活動で地層がずれた状態の断層のうち、今後も動く状態のものを指します。活断層が移動した場合にも地震が発生することがあります。

4つのプレートと2,000を超える活断層があることから、日本では地震対策が欠かせません。

過去に甚大な被害を出した地震がある

これまで日本においては、関東大地震や阪神淡路大震災、東日本大震災をはじめとして甚大な被害を出した地震が数多く発生しています。歴史を紐解いた研究では、数十年から200年という長い周期をかけながら、同じ場所で巨大地震が何度も繰り返されてきたことが判明しました。

例えば、南海トラフにおいては過去100年~150年の周期でマグニチュード8クラスの巨大地震が、繰り返し発生していることがわかっています。このような事例があるため、過去に大きな地震が起きた地域では特に強く警戒しなければなりません。

大規模な地震の発生が予測されている

内閣府によると、今後30年以内に次のような大規模地震が発生すると予測されています

 ・南海トラフ地震:発生確率は70~80%
 ・首都直下地震:発生確率約70%

南海トラフ地震・首都直下地震ともに震度7程度と、いずれも甚大な被害を引き起こすと想定されています。そのため、企業は地震に対する十分な備えが必要です。

地震による一次災害・被害の種類

倒壊している家

地震によってもたらされる直接的な災害を一次災害と言います。一次災害を予測することはほぼ不可能で非常に困難です。そのため、どのような災害が起こり得るのかを事前に知っておくことが重要です。

建物などの倒壊

大地震が起きた場合、建物の損傷・崩壊のリスクが発生します。ビルや家屋といった建物だけではなく、信号や標識、道路・橋なども地震により被害を受ける可能性があるため、注意が必要です。

地すべり

地すべりは、地下水や重力の影響により斜面の土砂や岩盤が下方へと移動する現象です。豪雨だけでなく、地震でも発生することがあります。地震による地すべりでは、地面に亀裂が入ることもあります。

そのため、地すべりや土砂崩れがどのような場所で発生しやすいのか、前もってハザードマップで危険性を把握しておきましょう。

地震による二次災害・被害の種類

黒煙が上がる空

地震による一次災害が過ぎ去った後も、油断は禁物です。地震によって引き起こされる災害には、一次災害をきっかけとした二次災害もあるからです。

ここからは、地震による二次災害をみていきましょう。災害の種類や内容を把握し、対策していくことが大切です。

余震

大規模な地震の発生後は、同じ地域や周辺地域では、余震が発生する可能性が高まります。余震は、必ずしも「大地震より規模の小さい地震」が発生する訳ではなく、最初の揺れと同程度もしくはそれ以上の大きな地震が発生することもあります。

そのため、地震は一度の揺れで終わるとは限りません。余震の心配がある場合は、報道でも繰り返し注意が促される傾向にあります。ラジオなどが手元にある場合は、余震に関する報道を確認しておきましょう。

火災

地震により、工場火災やガス火災、電気火災などさまざまな火災が発生するリスクが生じます。また、一度停電になり、その後通電した際に火災を引き起こす「通電火災」も二次災害の一つです。通電災害を防ぐためには、ブレーカーを落としておくとよいでしょう。

ただし、大規模な地震の後はそのような余裕がないことも多いものです。そのため、感震ブレーカーを備えておくことで、一定以上の震度の揺れがきた場合に主幹ブレーカーの強制遮断が可能になります。この場合は、非常灯まで切れて真っ暗にならないように、事前の確認が必要です。

津波

地震で津波が発生すると、被災した地域が水没します。また、引き波でさまざまなものが引き込まれるなどの、大きな被害が発生することもあるため注意が必要です。

津波の危険性がある地域で大きな地震にあった場合は、速やかに高台などの津波避難場所へ移動しましょう。

ハザードマップで、場所ごとの津波の危険性について把握しておくことも大切です。

液状化現象

液状化とは、地震の揺れで地表付近に堆積している砂質土の地盤が液体状になる現象です。地下水位が高く、ゆるく堆積した砂地盤で発生しやすい点が特徴です。

液状化現象が起きた場合、地下水が地表面に吹き出します。地盤沈下が起こり、建物が傾いたり、道路やライフラインにまで被害を及ぼしたりすることもあるため、注意しましょう。

なお、液状化現象は震源地の近くだけで発生するとは限りません。東日本大震災では、震源地から距離がある東京湾周辺の地域でも液状化現象が発生しています。

ハザードマップには、液状化の発生傾向図を示したものもあります。前もって液状化しやすい場所を確認しておきましょう。

土砂災害

土砂災害は、大雨だけでなく地震によっても引き起こされる二次災害で、両方が重なると発生しやすくなり、災害の規模も大きくなります。

この災害は、土石流やがけ崩れとも呼ばれ、土や砂だけでなく雨水を含むことで流動性が増し、流れ落ちる勢いやスピードが速くなるのが特徴です。

また、流れる過程で大きな岩や木、倒壊した建物の資材なども巻き込むため、途中にあるものを破壊し、一帯を土砂と瓦礫で覆ってしまいます。これにより、甚大な損害が発生します。

土砂災害は、山や谷、崖の麓、川の近くで発生しやすい災害です。これらの地域に住む人々は、予測経路を事前に確認し、災害が発生した際は速やかに安全な場所へ避難することが重要です。

ライフライン、交通機関や通信へも影響を与える

防災グッズ

地震が発生すると、水道や電気・ガスをはじめとしたライフラインの断絶が起きる場合があります。過去の事例では、電気の復旧に1週間以上かかったケースも少なくありません。

ライフラインの途絶、交通や通信の停止は、日常生活はもちろん企業活動にも深刻な影響を及ぼします。

これらの事象に備え、企業活動の迅速な回復を図るために、事前に十分な対策を講じておくことが重要です。

ライフライン

ライフラインは、人々が日常生活を送る上で不可欠な公共設備であり、主に水道、電気、ガスなどの設備を指します。地震による一次災害や二次災害でこれらの設備が損傷し、正常に機能しなくなると、日常生活を送ることが非常に困難になります。

また、幸い建物や従業員に大きな被害がなかった場合でも、ライフラインの長期間の断絶により活動再開に時間がかかることもあるでしょう。

災害の発生場所によって復旧に要する日数は異なりますが、首都圏直下型地震の被害想定では、ガスの復旧が最も時間を要するとされています。

 【復旧目標日数】
 ・ガス:55日
 ・(上下)水道:30日
 ・電気:6日

水道が止まると、トイレなどの生活用水や飲料水が使えなくなります。電気が止まれば照明や電子機器が使えなくなり、ガスが止まれば調理やお風呂を沸かすことができなくなります。

これらの設備が急に使えなくなることを想定して、ライフラインに合わせた備蓄品を準備しておくことが推奨されます。

 ・ガス:カセットコンロ用ガスボンベ、布団やコート
 ・水道:給水タンク、給水袋、飲料水
 ・電気:電気ポット、IHクッキングヒーター、電池

また、レトルト食品や缶詰などの食料を職場に備蓄しておくとより安心です。

交通機関

地震による地割れで道路が寸断されると、自動車やバスが運行できなくなることがあります。電車の場合、幸いレールに損傷がなかったとしても、安全点検が終わるまでは運転を停止することが一般的です。これにより、交通機関に大きな影響が出ます。

さらに余震が続く場合、電車は一日中運休することもあり、従業員や顧客が帰宅困難者になる可能性もあります。余震が続いている状況では、無駄に移動しないことが重要です。

そのため、水や食料、毛布などの防災備蓄品を事前に用意しておくことが推奨されます。

通信障害

通信障害は、ライフラインや交通機関だけでなく、企業活動に大きな影響を与えます。地震により停電が発生したり、通信機器が破損することで、通信が途絶えることがあります。また、被災した人々が一斉に通信回線にアクセスすることで、輻輳(ふくそう)が発生し接続できなくなることもあります。

非常時は速やかに連絡を取りたい状況ですが、インターネットや電話が使えなくなることで、社員の安否確認ができず不安に感じることもあるでしょう。

そのため、平常時に使用している回線以外に、非常時に使用できる回線を把握しておくことが重要です。

最近は、公共の場で誰でも利用できるフリーWi-Fiが提供されていることも多く、災害発生時には通信会社が被災者のためにアクセスポイントを無償で開放することも増えています。

したがって、もしものために複数の通信手段を用意しておくことが大切です。

地震後の心理的影響

一次災害と二次災害に関する知識を持ち、具体的な対策を進めることは非常に重要ですが、もう一つ心掛けるべきことがあります。

それは、被災した際に心身の健康を保つことです。

地震に遭遇した場合、まずは命を守ることが最優先です。また、震災は強い心理的ストレスを引き起こすため、時間が経つにつれて心身にさまざまな不調が現れがちです。具体的には、不安感による睡眠不足、頭痛や肩こり、動悸などの症状があります。

震災は心理的にも身体的にも影響を受けることを認識しておきましょう。

また、心身の不調を感じた時は、その状態が延々と続くように感じて、不安が増大することがあります。このような状態が長引くと、うつ状態に陥りやすくなります。

心身の不調が生じることは避けられないかもしれませんが、それが起こったとしても自分を追い込まないようにすることが大切です。心身の不調が起こることは正常な反応であり、永遠に続くわけではなく、最終的には回復するものです。

もし、心身の不調を感じた場合は、一人で抱え込まずに誰かに相談することが大切です。相談する相手がいない場合は、医療サービスや専門の相談窓口を積極的に活用してください。

まとめ

重なり合うプレートや活断層が多数あるため、日本は地震の起きやすい状況にある国だといえます。また、今後30年以内に大地震が発生する確率が高まっていることが発表されており、大規模な地震災害に対する備えが必要です。

地震による被害には、一次災害と二次災害があります。それぞれの災害内容を把握したうえで、事前に対策を講じておくことが、被害を最小限に食い止めることにつながります。

地震によりどのような災害が発生するか十分に把握したうえで、企業として可能な限りの災害対策を行いましょう。

前職にてロケット搭載用精密バルブやセラミック製バルブ、プラント用継手の設計を担当。高圧ガス製造保安責任者、危険物取扱者、非破壊検査、溶接管理技術など、多数の現場経験と資格を保有。 BCPについては、事業継続推進機構の災害情報研究会で、実際の危機発生時に情報がどのように流れて行くかを調べ、ICT技術を使って、リスクをいかに軽減できるかを研究している。リスク対策コンサルタントとして、多数のBCP策定支援や訓練支援を行っている。

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