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BCPを策定したあとは、その実効性を確かめるための訓練が欠かせません。机上訓練や実動訓練など訓練方法はさまざまあるため、従業員の習熟度や訓練の目的にあわせて、適切な方法を選ぶことが重要です。
ここではBCP訓練の計画に役立てていただけるよう、訓練の方法や内容、事例などを幅広く紹介します。訓練をする際のポイントもまとめました。
BCP訓練の重要性
BCP訓練には、BCPの機能性を確認したり、従業員にBCPを意識づけたりなどさまざまな役割があります。また、BCPの見直しや改善を行うためにも重要です。訓練で見つかった課題や問題点を解決し、内容を更新していくことで緊急時に役立つBCPへとブラッシュアップしていくことができます。
介護事業者はBCPの策定と訓練が義務
感染症や自然災害の発生時でも必要なサービスを提供するため、介護事業者にはBCPの策定および、訓練や研修などの実施が義務付けられています。BCP策定を怠った場合は「業務継続計画未実施減算」となり、基本報酬から以下の単位数が減算されます。
- 施設・居住系サービス:所定単位数の3%を減算
- 訪問・通所系サービス:所定単位数の1%を減算
BCPを評価するための訓練方法
BCP訓練のみに限らず、一般的に訓練方法は机上訓練と実動訓練の2通りに分かれます。BCP訓練を実施する際は、訓練の目的や習熟度に合わせて訓練方法を選ぶことが重要です。場合によっては、机上訓練と実動訓練を組み合わせることでより効果を高められます。
机上訓練
机上訓練とは、BCPの内容や手順を確認したり、想定したシチュエーションで対応を検証したりなど、机上で行う訓練の総称です。モックディザスタやイメージアップ訓練、ウォークスルーなどの方法があります。詳しい実施方法は次の章の事例で解説するので、ぜひご参照ください。
机上訓練は最小限のメンバーでも実施できるため、比較的取り組みやすいのがメリットです。また、短時間で多くの項目が検討できるのも利点で、BCPを策定したばかりのタイミングでは机上訓練から始める企業が多い傾向があります。
実働訓練
実動訓練とは、BCPの内容や手順を行動ベースで確認する訓練です。安否確認訓練や拠点立ち上げ訓練、代替施設への移動訓練など単体で行う訓練のほか、緊急事態発生時から事業継続までの一連の活動を確認する総合訓練があります。
実動訓練は緊急時を想定してより実践的な訓練ができるうえ、手順にかかる時間などをリアルに測定できるため、机上訓練では見えにくい課題に気づくことができます。一方で実施するには多くの時間とまとまった人員が必要なことから、実施のハードルは高い傾向にあります。
BCP訓練の事例
続いて、BCP訓練を計画する際に役立つ事例を、いくつかの訓練方法に分けて紹介します。
事例①モックディザスタ訓練
モックディザスタとは、模擬災害体験演習と呼ばれる机上訓練のひとつです。シチュエーションを想定し、その際にどう行動するかを複数人で議論します。災害模擬体験を通じて得た気づきや学びを活かし、災害対応の改善点や問題点を見つけることを目的として行われることが多い訓練です。
【具体例】
まずは会議室に人員を集め、7~8人のグループに分けましょう。準備ができたら、スクリーン上に「震度6の地震が発生しました」、「オフィスで○人負傷しました」など時系列で状況の変化を知らせます。このように刻一刻と変わる状況に対し、どのように対処していくかをチーム内で議論させる方法がおすすめです。
事例②イメージアップ訓練
イメージアップ訓練もモックディザスタと同様に、シチュエーションを想定して行う机上訓練です。ただし目的が異なります。イメージアップ訓練は想定するリスクに関して、できる限り多くの災害対応や実施すべき項目を洗い出すことを目的に行います。そのためモックディザスタで災害をシミュレーションしてから、イメージアップ訓練で災害対応を改善していく流れが一般的です。
【地震をテーマにしたケース】
まずは参加者をグループに分け、「朝6時、自宅で出社準備をしているときに大規模の地震が発生しました。地震が収まり、家を出ると建物の一部が損壊している状況です」など、シチュエーションを説明します。次に「災害時に企業が早く立ち直るために実施する事項を考えましょう」と課題を投げかけ、グループで話し合ってもらいましょう。最後に、グループごとに考えた災害対応を発表してもらう時間を設けるとより効果的な訓練となります。
事例③ウォークスルー訓練
ウォークスルー訓練も机上訓練の一種です。BCPで定めた内容や、行動手順をまとめたマニュアルの読み合わせを行い、現状の課題や改善点を洗い出すために行います。
参加者はあらかじめ、緊急時に自身が行うべき対応を頭に入れたうえで訓練に参加しましょう。進行役であるファシリテーターが緊急事態発生から、被害状況やライフラインの状況を時系列ごとに説明しながら、その都度行うべき対応を参加者に尋ねます。「通信規制により電話がつながりにくい状況も考えられます。安否確認を電話で行うという手順に問題はありませんか」など万が一を想定した質問を投げかけ、対応の実行可能性についてさらに検討していきましょう。
事例④BCP手順確認訓練
BCP手順確認訓練は、BCPに記載されている内容や行動手順書に倣って、実際に体を動かしながら対応を確認する実働訓練です。実際に足を運び、手を動かすことで、策定時には気づかなかった問題点を洗い出すことができます。まずは安否確認訓練や代替施設への移動訓練など、BCPの一部を確認する訓練から行うとよいでしょう。
【拠点立ち上げの訓練ケース】
いかなる状況でも事業継続の対応につなげるため、休日などに災害が発災した場合の参集と拠点立上げの訓練を行っている企業があります。手順としては災害の発生を通知し、事業継続に必要な要員が最寄りの駅に集まり、初動体制の立ち上げの確認を行いました。この企業では社外からの参集に不慣れであったため、訓練後にマニュアルをより充実させたといいます。
事例⑤統合訓練
統合訓練は、組織のすべての人員を総動員して行う大規模な実動訓練です。総合訓練ではシナリオを事前に参加者に伝えず、訓練中に被害状況を伝えながら進めることで、災害対応力をより高めることができます。協力企業と巻き込んで訓練を実施する方法も効果的です。
【全社員での訓練ケース】
BCP訓練のシナリオ例
オフィスにおける大規模災害シナリオ
| 目的 | 自社にとって重要な情報資産が失われた場合、早急にバックアップを行い、事業を復旧させること |
|---|---|
| 発生状況 | 2025年〇月〇日(〇)15時30分に、震度6強の首都直下型地震が発生 |
| 被害状況 | 従業員にケガ人はなし 停電はしていない 情報システムは無事だが、システム内のデータが一部破損 |
| 訓練内容 | まずは従業員の安否確認を行い、身の安全を確保してから、情報システムの被害状況を確認 外部サーバーからバックアップデータを取り出し、情報システムの復旧作業と動作確認まで行う |
介護・病院施設での集団感染シナリオ
| 目的 | 感染を拡大しないための初動対応の強化 |
|---|---|
| 発生状況 | 2025年〇月〇日(〇)、3日前から発熱で休んでいた職員Aからインフルエンザへ感染したと連絡あり |
| 被害状況 | 同施設で勤務する別の職員2名からも発熱の連絡があり |
| 訓練内容 | 連絡を受けた職員は速やかに責任者へ報告、保健所への連絡も行う 早急に職員Aの感染期間と行動歴を明らかにし、濃厚接触者を割り出す(その際、個人情報の扱いには注意を払う) 濃厚接触者や症状が出ている患者や職員に、即座に検査が実施できる体制を整える |
BCP訓練を効果的に実施するポイント

BCP訓練はただ実施するだけでは十分な効果が見込めない可能性があります。以下でポイントを紹介するので、訓練の計画や実施に役立ててください。
目的を明確にすること
効果的な訓練を実施するには、“なぜこの訓練を行うか”という目的を明確にすることが重要です。「安否確認および重要事業に関わる従業員の確認に関して返答率70%を目指す」、「目標復旧時間内に生産設備を復旧する」など、具体的な目標を設定しましょう。
さらに、目的を事前に参加者に伝えることもポイントとなります。目的を伝えることで、参加者それぞれが自分ごととして認識できるため、習熟度にも影響します。
具体的なシナリオを作成すること
より実践的な訓練を実施するには、参加者が状況をイメージをしやすく、かつ意欲的に参加できるシナリオ作成が重要です。発生したインシデントの種類、規模、時刻、被害状況などを定めて、具体的かつ現実的なシナリオを作成しましょう。自社のハザードマップを参考にするほか、過去に実際に起きた自然災害や事故などを想定して作成するのもおすすめです。
訓練後に必ず振り返りを行うこと
BCP訓練後は課題や問題点が浮き彫りになるため、BCPの見直しを行うのに最適なタイミングです。必ず振り返りの時間を設け、課題や問題点を改善していきましょう。
訓練後の振り返りは訓練当日や翌日など、記憶が新鮮なうちに行うとよりよいです。遅くとも1週間以内には行いましょう。参加者全員を集めた反省会を開く方法のほか、参加者にアンケートを実施する方法もあります。
定期的に実施すること
介護事業者は年2回の訓練(訪問系サービスは年1回)が義務化されています。一般企業の場合、訓練の回数に決まりはありませんが、自社にBCP文化を定着させるためにも定期的な訓練の実施が必要です。繰り返し訓練を実施することで、従業員の事業継続力も高まっていきます。
また、訓練後の振り返りで改善した点が有効に機能するかを確認するためにも、定期的な訓練の実施が欠かせません。
BCP策定後は計画的な訓練の実施が必要不可欠
BCP訓練は、従業員へBCPを理解させたり、緊急時の対応力を高めたりなどのメリットがあるほか、BCPの見直しにも効果を発揮します。そのため、BCPの策定と訓練は必ずセットで考えることが重要です。
ただし、ただ訓練を行うだけでは効果が見込めない可能性があります。訓練後の振り返りや定期的な実施など、効果を高めるための訓練計画をあらかじめ立てておきましょう。













