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事業継続ガイドラインの目的とは?BCMやBCPについても解説

事業継続ガイドラインは、BCMやBCPの必要性や策定手順などが網羅されている資料です。これまで定期的に改定が繰り返されており、企業がBCPを策定する際にも役立てられます。

しかし、そもそも事業継続ガイドラインとはどのようなものなのでしょうか。

今回は、事業継続ガイドラインについてふれたうえで、BCMとBCPの特徴、BCPのメリット・デメリットをみていきます。

事業継続ガイドラインとは

若いビジネスマン

まずは事業継続ガイドラインについてみていきましょう。存在する目的や位置付けを知ることで自社の業務内容や規定の策定にも役立てられます。

目的

事業継続ガイドラインは、事業継続の取り組みなどを示したうえで、日本の企業・組織などの自主的な取り組みを促します。日本全体の事業継続能力の向上を実現することが目的です。

位置付け

日本国内におけるBCMの状況をふまえ、国際的な規格や諸外国での取り組みに対する基本的な考え方が把握できるように作られています。そのため、事業継続ガイドラインに沿って取り組みを行うことで、BCMの国際的な整合性を確保することにも役立ちます。

記載事項の中には、推奨や例示などがあるものの、各企業は自社に適した事項を取捨選択して取り組めば問題はなく、企業・組織独自の工夫も重要という位置付けを示しています。

出典:内閣府防災担当「事業継続ガイドライン―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―(令和3年4月)
<http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/pdf/guideline202104.pdf>

ガイドラインで取り上げられているBCMとBCP

BCP

事業継続ガイドラインに記載されているBCMとBCP についてみていきましょう。

BCM(事業継続マネジメント)とは

BCMはBCPで計画した内容を運用し、計画の見直しや実行をする作業や活動全体のマネジメントのことです。BCPの内容を実践しつつ、緊急事態が発生した時に使用するツールの選択やマニュアルの作成など事業継続に関連するマネジメント全般が含まれます。

事業がストップした場合、企業としての信頼を失ってしまうことになるでしょう。また、産業の分業化や外注化が進んでいるため、1つの事業が中断することで、他の事業やステークホルダーに悪影響を及ぼしてしまう可能性もあります。

しかし、BCMを行うことで、BCPの整合性や最新の状況に対応出来るようになります。

BCPとは

BCPは、地震や台風などの自然災害や事件などの緊急事態が発生した結果、自社の事業を継続して事業への影響を最小限にするための計画のことです。緊急事態の発生時に中核事業が継続できず、廃業や倒産に陥るリスクを減らすことが策定の目的となります。

また、一度策定したとしても企業の状態に合わせて定期的なアップデートや見直しも必要です。

BCPの策定に関する法律上の義務はない

策定を義務付ける法律や条例は存在していません。しかし、策定することで、社内外から企業としての信頼を得ることができ、結果的に社員と顧客の安全を守ることにつながります。

BCP策定のメリット

ハンカチで口を押さえる人々

BCPを策定するメリットをみていきましょう。

災害などの発生時に対応できる

企業に対して、災害や社内トラブルなどの緊急事態が発生した場合でも、すぐに対応できるようになります。そのため、中核事業の早期復旧がしやすくなり、経営面での被害を最小限に留めることが可能です。

取引先からの信頼を得られる

災害などの緊急事態が発生した場合、事業に損害が出るだけでなく、企業の事業が一時的に中断することもあります。そのため、場合によっては信頼を失ってしまうことも想定されます。

しかし、BCPが策定されている場合、対策が整備されていると評価されたうえで、復旧作業を効率的に進めることが可能です。中核事業が中断しても早期に復旧が可能であれば、取引先からの信頼性を高められるでしょう。

また、企業が保有しているデータは災害などで失われる可能性もあります。仮に、自社だけではなく、場合によっては取引先の事業継続までも困難にしてしまうケースも想定されるでしょう。

データの中には、機密情報や個人情報など消失や漏洩が許されない情報も存在するため、複数の保管先に分散させてアクセス権限を設置することで、リスクを軽減できます。

自社にとって重要な業務や優先度が可視化される

BCPを作成する過程では、自然災害などに直面した場合を想定してシミュレーションを実施します。その中で、どの事業や業務を優先するのか話し合うことになるため、自社にとって優先しなければならない重要業務の把握が可能です。

BCPのデメリット

電卓を持った男性

BCPにおける企業にとってのデメリットと考えられている事柄についてみていきましょう。

策定やリスク分散コスト

BCPを策定する際には、さまざまな部署から人員の協力、綿密な下調べが必要です。企業によっては、取引先との協議などが必要な場合もあります。それだけでなく、担当者の人件費などの策定コストも考慮しなければなりません。

策定後に関しても、緊急事態が発生した場合に社員が素早い対応をとれるように教育の時間などは想定しておく必要があります。

BCPの規定によっては、企業にとって必要となるデータをデータセンターなどで管理・保存する場合もあるでしょう。データセンターを利用する場合、保守レベルで費用に違いが出るため、リスク分散にかかるコストが負担となることがあります。

想定される被害や損害に対する備えを強固にしようとすれば、それだけ対策にかかるコストが増えることになります。BCPのメリットを得られるのは、実際に災害が発生し、BCPが機能した時のみであると思われています。確かに、機能しなければ、いくらコストをかけても直接的に利益を生むことはありません。そのため、経営基盤が弱い企業では、コストのかかるBCPの策定に踏み切れていないといった間違った言い訳をするという実態があります。

本来、BCPはコストではなく、会社の信頼やレジリエンス力を上げる「バリュー」であるという位置づけが必要です。また、単なるコストセンターではなく、アイデア次第で災害があっても強い会社に出来ると言う考え方が重要です。

簡易的な計画では災害時に役に立たない

BCPは企業に損失を与える緊急事態を仮定しながら策定するものです。そのため、簡易的な計画や他の企業の計画を真似したようなものでは、災害発生時に活用できません。

緊急事態が発生した場合に活用するためには、自社に合う内容を作成しましょう。コストをかけるだけではなく、社内のアイデアを上手く活用して、適切に使えるBCPにしていきましょう。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大のように、企業が想定していない緊急事態が発生する可能性もあります。こうした想定外の事態が発生した場合でも、自社の中核事業を守るというBCPは必ず、オールハザードに機能します。

まとめ

事業継続ガイドラインは、事業継続の取り組みなどを示すことで、日本全体の事業継続能力の向上を実現することを目的としています。

この中で記載されているBCMはBCPで計画した内容をもとに、計画の見直しや実行を行う作業を示します。事業の中断を抑えつつ、被害を最小限にすることが目的です。

BCPは、緊急事態が発生した場合に事業を継続し、被害を最小限にするために事前に考えておく計画です。

BCPを策定できれば、災害などの緊急事態に備えられる、取引先からの信頼を得られるなどさまざまなメリットがあります。その一方で、書類ばかり膨大な、使えないBCPは、リスク分散にコストがかかってしまうなどといったデメリットがあることも事実です。

万が一の事態に備えるため、活用できるBCPを策定することが重要といえるでしょう。

出典:内閣府防災担当「事業継続ガイドライン―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―(令和3年4月)
<http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/pdf/guideline202104.pdf>(最終アクセス 2022年1月14日)

前職にてロケット搭載用精密バルブやセラミック製バルブ、プラント用継手の設計を担当。高圧ガス製造保安責任者、危険物取扱者、非破壊検査、溶接管理技術など、多数の現場経験と資格を保有。 BCPについては、事業継続推進機構の災害情報研究会で、実際の危機発生時に情報がどのように流れて行くかを調べ、ICT技術を使って、リスクをいかに軽減できるかを研究している。リスク対策コンサルタントとして、多数のBCP策定支援や訓練支援を行っている。

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